インサイト ・ 2026.07.20

システム開発の相見積もり比較|提案書の評価軸と「安い見積もり」の読み方

RFPを出して複数社から提案が集まったあと、多くの発注者が突き当たるのが「どう比べればいいのか分からない」という問題です。各社の提案書は構成も粒度もバラバラで、見積金額は倍以上開くことも珍しくありません。本記事では、提案書の評価軸の作り方と、見積書の読み方を解説します。

評価軸はRFPを出す前に決めておく

大原則として、評価軸は提案が届いてから考えるものではありません。届いてから作ると「印象の良かった会社に合わせた軸」ができてしまいます。RFPに評価の観点を明記しておけば、ベンダー側も的を絞った提案を出せます。

標準的な評価軸の例(配点は目的に応じて調整):

  • 要件理解度(25点) — こちらの業務・課題を正しく理解しているか。RFPの言葉をなぞっただけの提案は要注意
  • 実現方法の妥当性(20点) — 技術選定の理由が説明されているか。流行語の羅列ではないか
  • 体制と実績(20点) — 実際に手を動かす人は誰か。類似案件の実績はあるか
  • 価格(20点) — 金額そのものより「内訳の透明性」を評価する
  • 保守・運用(15点) — 納品後の体制・費用・対応時間。ここが空欄の提案は後で困ります

見積書で必ず確認する項目

確認項目見るポイント
前提条件「◯◯はお客様支給」「△△は含まない」の一覧。ここが追加費用の火種です
工数の内訳設計・実装・テストの配分。テストが1割未満の見積もりは品質リスクあり
体制単価誰が(PM/シニア/ジュニア)何人月か。総額だけの一式見積もりは比較不能
検収条件何をもって完成とするか。曖昧なままだと検収でもめます
変更管理要件変更時の扱い。単価と手続きが書いてあるか
保守費用月額と対応範囲。初年度無償でも2年目以降の金額を確認

「安い見積もり」に潜む3つのパターン

1. スコープを狭く読んでいる

RFPの曖昧な箇所を最小解釈で見積もると金額は下がります。契約後に「それは含まれていません」が始まるパターンで、最終的な総額は高い方の見積もりを超えることがよくあります。曖昧さはRFP側の責任でもあるため、発注前に質疑で潰しておくのが防御策です。

2. 若手中心の体制で単価を下げている

単価の安さは体制表に表れます。設計をリードする経験者が誰か、その人は何%この案件に入るのかを必ず確認してください。

3. 戦略的な赤字受注

初回案件を安く取り、保守や追加開発で回収するモデルです。それ自体は悪ではありませんが、保守の単価と拘束条件(他社に引き継げるか、ソースコードとドキュメントは納品されるか)を契約前に確認する必要があります。

質疑応答は「無料の実力テスト」

提案前の質疑応答(Q&A)は、ベンダーの実力が最もよく見える場面です。質問の質が高い会社は、業務を理解しようとしている会社です。逆に、質問がゼロのままRFP通りの提案を出してくる会社は、契約後に認識齟齬が噴き出すリスクが高いと考えてください。

まとめ|比較できる状態を作るのが発注者の仕事

相見積もりの成否は、提案が届く前——RFPの品質と評価軸の設計——でほぼ決まっています。シャノンでは、開発会社としての相場観をもとに、評価軸の設計・見積もりの妥当性チェック・ベンダーへの技術的な質疑対応を発注者側でお手伝いしています。自社が候補に入る場合は評価から外れる形を取るので、中立的なセカンドオピニオンとしてもご利用いただけます。